クローバー 第70回定例会 まとめ

クローバー 横浜定例会 第70

 

 202225日の横浜会場にて、以下のテーマについて皆で話し合いました。

 

1.症状について

2.ピアサポートでの的確な言葉

3.偏見に対して如何に考えるか?

4.おふくろの味について

5.自分で自分を認める

 

 以下、当日の議論の詳細です。

 

1.症状について

 

 メンバーの方から、ご自身が抱える統合失調症の病気の症状について共有したいという申し出がありました。その症状とは、所謂、陰性症状で起こる感情の平板化現象です。感情面でプラスの感情が出せない事が悩みであるそうです。例えば、何かを食べて美味しいとか、マッサージを受けて気持ち良いとかの感情が鈍化しているという話でした。

 

 実際に本件について定例会参加したメンバー達に訊いてみると、似たような症状を抱えているという人達もいました。感情そのものが出ない為、そういう時期は自宅で映画鑑賞でもしてのんびりしていると落ち着くという発言もありました。あるいは陰性症状を紛らわす為に、猫に餌をあげていると生きている実感があるという発言もありました。皆さん、共通している事項は、やはり陰性症状の時期になると食欲も意欲も湧かない為、何もしたくなくなるそうです。

 

 なぜ、陰性症状では感情の平板化が起こるのか、も議論になりました。陰性症状とペアである陽性症状にも関係があるのではないかという発言もありました。陽性症状で幻聴が聴こえる為、これを治療する意味で抗精神病薬を飲む訳です。そうするとドーパミンなどを抑制する事で幻聴は減るのですが、その分、薬の副作用で感情が鈍化するという現象も起こるようです。だからこそ、対策として、なるべく薬を減らしてみるという方法が主治医から提案されたそうです。

 

 もっとも、感情が平板化するからと言って、すぐに死亡が差し迫っている訳ではありません。普段の生活では支障なくお仕事もできている為、生きていられればそれで良い、とポジティブに考えてみるのも手だという発言もありました。病気には治る時期(寛解や小康状態)もある為、気長な気持ちで病気と共存する生き方を模索してみては、という助言もありました。クローバーを始めとした、ピアサポートの場を活用するなどして、病気との生活に折り合いを付けていける事を祈っています。

 

2.ピアサポートでの的確な言葉

 

 クローバーの定例会やLINEなどのピアサポートの場で、誰かが問題を抱えて発言していた時、どうすれば的確な助言ができるか、がメンバーから問題提起されました。なぜなら、自分がいざ助言をしようとしてみても言葉が出てこない事があるからだそうです。しかし、不思議と他のメンバー同士では、的確な言葉の助言で助け合えている場面をよく見かける為、その技術や考え方が知りたいとの事でした。

 

 ところが、そもそも言葉が問題なのか、という意見もありました。ピアサポートの場で正しい言葉で正しい助言をすれば正しく助けられる、という訳では必ずしもないからです。それよりも大事な事は、相手の相談事について真摯に耳を傾ける姿勢がまず必要だそうです。こういったピアサポートの場では、問題を抱えているのは自分だけではないと共感してもらえるだけで救われるという人達もいます。

 

 何を以って相手の話を聴くと見做すか、という意見もありました。ただ、聴いて欲しいだけの人もいれば、解決方法が知りたい人もいます。あるいは、本人があらかじめ答えを持っている場合は、その答えを人に言って欲しい事が求められる対応です。「これこそが相談に対する正しい言葉」とは一概に言えず、結局、その場その場で臨機応変な対応方法で対処していくしかありません。

 

 また、自分が助言する事によって、相手を怒らせてしまったら、傷つけてしまったら、どうしよう、という相談を受ける側の悩みもあります。ただ、相談を受けていた側は、細心の注意を払って、善意で助言をした訳ですから、悪い結果が返って来ても致し方ありません。特にクローバーのような場は、お互いが善意である事が根本的な安心感で支えられています。もっとも、善意に気を配る私達であっても、お互いに傷付け合ってしまう事もあります。

 

 そして、助言をする上で最も気を付けたい事が一つあります。それは、あまり深く関わるな、という事です。極論を言えば、人間は自分の身が可愛いところもありますから、助言はできる範囲でやりましょう、という話です。相談事を受けていると、自分の事のように思い過ぎて、ついつい自分が相手を背負い過ぎてしまう人もいます。何だかんだ言っても、人間は無力なところもありますので、助言は程々な方が良いのかもしれません。

 

3.偏見に対して如何に考えるか?

 

 精神病に対する世の中の偏見を如何に考えるか、がメンバーから問題提起されました。例えば、精神科領域の薬を飲んでいて、通院歴や入院歴のある人が事件を起こすと、マスメディアやソーシャルメディアでは、病気の部分を強調して批判する風潮があります。そして、そのようなメディアの心ない批判が、世の中の精神病に対する偏見を助長しているのではないか、という意見です。

 

 また、メディアに限らず、日常生活でも精神病に対する偏見を感じるというメンバー達の意見もありました。習い事の同意書で、他にも対人援助の場で、精神科領域の薬を飲む人は参加を即座に断られるというケースがありました。ただ、本人としては、主治医の診断書の提出などで判断を仰ぐ事は難しかったのだろうか、と疑問に思ったそうです。

 

 あるいは、統合失調症という病気の分野が、わかりづらい為に偏見を持たれやすいのではないだろうか、という意見もありました。

 実は統合失調症という病名は、クレペリンの「早発性痴呆」の定義から始まり、ブロイラーの「精神分裂病」の病名変更を経て、現在の日本国内では「統合失調症」と病名変更されています。病名が変更する度に差別と偏見の問題に大勢の人々が取り組んでいましたが、自然科学的にも病気の原理が完全に把握されていない為、現在でも解明が厳しい難病とも言われています。

 なお、リウマチなどのわかりやすい身体症状の病気に比べると知名度と理解度が格段に劣る為、当事者自身も周囲への説明が難しいという意見もありました。

 

 もっとも、統合失調症の知名度や理解度が世間的に低いのであれば、啓蒙活動をしてみるという手段もあります。例えば、過去に神奈川県川崎市で開催された『統合失調症と共に生きるフォーラム』に、クローバーの現代表が登壇した事がありました。当時の呼び掛けで現在のクローバーが創設されたという経緯もあります。統合失調症の認知を広める為、今後のクローバー活動にも皆で期待しましょう。

 

4.おふくろの味について

 

 定例会参加者達にとって家庭でのおふくろの味にはどのようなものがあるか、がメンバーから提起されました。

 

 皆で意見を出し合ったところ、「カレーライス」を食べて育った、という意見が多かったです。一言で「カレーライス」と言っても、ポーク、ビーフ、野菜、プレーンなど、様々なカレーライスが存在します。具材は二日掛けてビーフカレーを作る家庭、豚の角煮を入れる家庭、肉無しのトマトカレーの家庭など多様でした。あるいは日本食ではなく、タイ食のグリーンカレーという家庭もありました。それぞれの家庭では、米や具材や香辛料などの使用から調理道具までにも拘りを見せている、という意見が出揃いました。

 

「カレーライス」の他にも、コロッケなどの「揚げ物」がおふくろの味という家庭もありました。正月に食べる「お雑煮」にかつお節の拘りがあるなどの意見もありました。定例会で話し合った結果、おふくろの味は家庭次第で様々な味が、皆の実家にある事がわかりました。

 

5.自分で自分を認める

 

 自分で自分を認められない為、自分で自分を認めるにはどうすれば良いか、というメンバーからの問題提起がありました。つまり、他人の評価がそのまま自分の評価になってしまう為、つらくなるそうです。

 大事な人が自分を評価してくれているうちは良いけれど、その評価がなくなると自分で自分がわからなくなるというのが悩みだそうです。しかし、本人としては、人の評価が前提ではなく、自分とは自分であるが故に「今・ここ」に「私」がいたいそうです。

 

 もっとも、相手に受け入れてもらえる為には、相手を受け入れることが前提ではないか、という意見がありました。要するに自立した個人として、まず自身が立脚する前提がなければ、他人を受け入れる事も、他人から受け入れてもらえる事も難しいのでは、という意見です。ただ、この辺は人としての個人差がありますので、一概に自立を前提で要求するのは難しい話かもしれません。

 

 また、私達クローバーのメンバーはそれぞれの生きている状況が違えども、統合失調症という病を生きたという事実があります。定例会参加した何人かが、自身の統合失調症の症状を語りながら、この病気を超えた凄さは自己肯定感に繋がるのではないか、という意見を述べました。また、統合失調症という病気になったからこそ、見えて来たものもたくさんあったという意見もありました。

 

 私達はクローバーのメンバー同士で支え合う事で、今の統合失調症という状況を逆に上手に活用していきたという議論の流れに収まりました。私達は、病気である自身と他者を認める事ができれば、最後は自分達の生き方そのものも肯定できるのではないでしょうか。

 

 クローバー定例会記録係(山内)